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マンション管理士 藤城 純一は管理組合と区分所有者を支援します。

マンション管理士 藤城 純一

話し合いのポイント その2

話し合いのポイント その2



●「どちらも正しい」からスタートする

管理組合の話し合いに限りませんが、どちらが正しいのか? を突き詰めようとすると、話がこじれてしまう傾向があるようです。
どちらが正しいのか? を突き詰めようとすると、どちらかが間違っていることを自ら認めなければなりません。
これは、プライドが傷つきますから、ものすごく難しいことです。ということは、間違っていると追い詰められた側が理屈に合わない反論を繰り返すなどして、妥当な結論であっても双方が合意するには至らないケースが増えてしまいます。 
このような展開を防ぐには、「どちらも正しい」からスタートすることと、相手を否定しないことを意識することが役立ちます。
そもそも、「正しい」ことの定義すら話し合っていないことがほとんどでしょうから、「どちらが正しいのか?」を議論するのは困難なのです。
また、「正しい」ことは、それぞれの立場によって大きく異なります。(例えば、機械式駐車場の更新問題を考えるとき、駐車場利用者と利用していない者では、利益が相反しますから、発想のスタートも結論も異なってしまいます。) 

管理組合では、少数派がわがままを言うことはよくありませんが、多数派が少数派を無視することもよくありません。全体を考えつつ、個別の利益にも配慮が必要です。
これらを知れば、そう簡単には、「どちらが正しいのか?」を決められないことを理解できると思います。 

●話し合いの前提条件と準備、整理の進め方

整理するという行為は、本棚でも議論でも、やり方はまったく変わりません。

「似たようなものをひと固まりにする(組織化)」と「固まり同士を分ける(分類化)」を同時に行います。

似たような意見をグループ化していけば、議論全体が把握しやすくなります。それぞれの発言の真意から考えて、重なり合う意見や主旨が近い意見をひとまとめにしていき、いくつかのブロックに集約させるのです。

このことから、管理組合においても、同じ方法が役立ちます。
例えば、ある課題に対するクレームが入ったとします。その時は、最初にクレームの詳しく内容を確認する必要があります。そして、クレームの原因側からも内容を詳しく聞きます。そのあと、その内容を同じ、あるいは、似た意見や希望でまとめていけば、問題点がはっきり見えてくるはずです。 

●一致点と対立点を区分けする

合意点を見つけるには、第一にメンバーの発言の真意を探し出しましょう。
無理に結論をまとめようとしたり、大まかに一致しているのに細かい点をほじくり出したりしていると、新たなコンフリクトの原因になるので注意しましょう。
意見の異なる場面においても、すべてで対立しているわけではなく、部分的には一致しているはずです。一致点がわかれば、対立点も理解しやすくなります。 

●対立の原因を明らかにする

議論している対立点が表面的なものであり、もっと深いところにコンフリクトの原因がある場合が多いからです。やはり、詳しく内容を確認し、真意を理解することが重要です。

 注;コンフリクトとは、相反する意見、態度、要求などが存在し、互いに譲らずに緊張状態が生じること。対立、軋轢。 

人は常に社会の一定の立場から問題を見ています。ところが、たいていの問題には、個人と組織、顧客と会社、男性と女性、大人と子ども、上司と部下など、異なる立場の人間の双方がかかわってきます。そこに、コンフリクトが発生します。
この場合、地位の力を利用して片一方のコンテクストを押し付けてはいけません。お互いに違う立場に立って問題を見つめ、相手のコンテクストを尊重することから始めないといけないのです。 

注;コンテクストとは、文脈、状況、前後関係、背景などを指す。

●真の目的を確認する

真の目的にまでさかのぼって議論してみると、案外お互いが求めているものが違うかもしれません。そうであるなら、互いの欲しいものをそれぞれが取り合えば、見かけは2つに分けたとしても、お互いが100%満足できる。双方の目的を満たすために何が交換できるかを柔軟に発想していくようにしよう。 

●すべてのアイデアを検討する

コンフリクトを解消する過程で、可能性のあるすべてのアイデアが検討される。異なる考えがぶつかり合うことで、創発的にまったく新しい考えが生み出される可能性もあります。優れた選択肢は、「意外性」「納得性」を兼ね備えています。話し合いをするときは、あからさまに相手を非難する、あるいは、心理的な線引きをしようとする発言を戒めなければなりません。そして、様々な立場の者が主張する方向が違っても、ともに組織の存続と発展を願う同士であることを思い出しましょう。
そのためには、お互いの目的は何なのかをあらためて問い、一致できる上位目標を見つけることです。 

●情報と熱意のギャップ

例えば、何ヶ月も検討を続けてきたプロジェクトと、何も知らされていない現場とでは、相当の情報や意識のギャップがあります。だから、相手の心を動かす情熱と迫力が不可欠です。

 ●企業と非営利組織の違い

ビジネスでは少しくらい強引にリーダーが組織を運営しても、成果が上がれば文句を言う人はいません。ところが、非営利組織における合意形成では、発言の時間や回数、会議の進め方やルール、開催する場所や時間など、あらゆる面において公平に運営しなければいけません。意思決定への参画の機会と関与が公平になるようにすることが重要なのです。




マンション管理士 
藤城 純一

神奈川県横浜市金沢区在住

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junf@r3.dion.ne.jp